高山本線(岐阜~猪谷)

路線について

所在地 岐阜県、富山県(岐阜~猪谷間として)
駅数 36駅(岐阜~猪谷間として)
開業 1920年(大正9年)11月1日(当路線全体として)
距離 189.2km(岐阜~猪谷間として)
複線以上が存在しているか ×
電化区間が存在しているか ×
最高速度 110km/h

高山本線(岐阜~猪谷)路線図


クイックアクセスガイド

路線の概要

路線の歴史(岐阜~猪谷)

沿線の概況(岐阜~猪谷)

駅の紹介(岐阜~猪谷)

車両(岐阜~猪谷)


路線の概要

高山本線は、岐阜県岐阜市の岐阜駅と富山県富山市の富山駅を結ぶ東海旅客鉄道(JR東海)と西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(地方交通線)です。岐阜~猪谷間は東海旅客鉄道(JR東海)、猪谷~富山間は西日本旅客鉄道(JR西日本)の管轄となっています。高山線とも呼ばれています。

飛騨高地の山間を縫って岐阜市と富山市を結んでいますが、山間部あるいは盆地である岐阜県飛騨地方へのアクセス路線でもあり、下呂温泉や高山市、飛騨市への観光路線としての性格を持っています。岐阜~猪谷(構内を除く)間はJR東海の東海鉄道事業本部が、猪谷~富山間はJR西日本金沢支社の北陸広域鉄道部がそれぞれ管轄しています。本州の「本線」では唯一、地方交通線に分類されています。

JRの前身である日本国有鉄道(国鉄)時代の1960年代に観光ブームにのって乗客が激増し(1958年に比較して1965年の優等列車乗客数は、約5倍となった)、貨物輸送も沿線の開発に伴って増加したため、1960年代後半に蒸気機関車牽引列車の廃止とともに列車行き違い設備の増設(飛水峡・鷲原・福来の各信号場新設、禅昌寺駅・千里駅の交換駅化が行われた)や列車集中制御装置(CTC)の導入(200kmを越える在来線路線へのCTCの導入は、国鉄初となった)といった輸送近代化が行われ、列車の増発が可能となりました。国鉄分割民営化後は岐阜~高山間において行き違い可能駅で両開き分岐器(Y字ポイント)を110 km/hでの高速通過が可能な型に取り換えるなど、優等列車の高速運転が行えるように改良が行われています。

かつては電化計画もありました。1980年(昭和55年)5月6日の国鉄理事会で全線225.8kmの電化計画が決定され、翌日、運輸大臣に認可が申請されました。18か所の変電所を設置し、全線を直流1500Vで電化する計画で、投資額は約200億円、1985年度(昭和60年度)の電化開業を目指していました。1980年5月27日には高山駅構内で起工式が行われました。 電化時には当時中央西線の特急「しなの」に使用されていた車両と同じ381系直流特急用振り子車両の導入、および急行以下用は457系交直流急行形電車の再生産が計画されていましたが、需要減や国鉄の財政逼迫から1985年頃までに電化計画そのものを取りやめ駅構内などの線路改良と高性能気動車の導入に転換しました。なお、沿線に420本の架線柱が設置されていましたが、通信専用線電柱に転用されました。その結果、特急列車に関してはJR移行後の新型車両キハ85系の導入によって従来の特急形電車と同等に近い性能となり、高山以南の所要時間は電化された場合と遜色がなく、振子車両特有の揺れも無いので新車導入当初は好評でありました。しかし、2008年(平成20年)に東海北陸自動車道が全線開通し、さらには2019年(令和元年)に高山市街地近くまで4車線化されたことにより、高速バス「ひだ高山号」との競争が激化しています。

名古屋駅など東海道本線木曽川駅以南の各駅と、富山駅など北陸本線(現・あいの風とやま鉄道)福岡駅以東の各駅との距離は米原駅経由よりも高山本線経由の方が短くなっていますが、東海道新幹線が米原駅経由で開業し、あわせて北陸トンネルの開通をはじめ北陸本線の電化・複線化・高速化が行われ電車特急が頻発されるようになったため、所要時間や利用機会(列車本数)は北陸本線経由が優位となっています。ただ、高山本線の特急「ひだ」がキハ85系に置き換えられスピードアップを果たしてからは、名古屋~富山間の所要時間では米原経由の「しらさぎ」とほぼ同等になりました(現在は「しらさぎ」は金沢止まりとなり、富山へ行くには北陸新幹線あるいはIRいしかわ鉄道線・あいの風とやま鉄道線の列車に乗り換えなければならない)。なお、北陸本線の電化区間が富山駅まで達する前の1963年(昭和38年)までは、大阪方面からも距離は長くなるが岐阜駅で列車を乗り継ぎ高山本線を経由する方が富山駅までの所要時間が短いことがありました。

岐阜~鵜沼間では名古屋鉄道(名鉄)各務原線と並行しています。同区間の距離における地方交通線の運賃表は210円区間を除き幹線と同一料率であり、名鉄より安い運賃になっています(2021年現在)。また岐阜~美濃太田間はIC乗車カード「TOICA」の利用エリアに含まれています。

2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線長野~金沢間開業により、並行在来線区間にあたる北陸本線金沢~直江津間はIRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道の第三セクター鉄道3社に経営分離されましたが、本路線のJR西日本区間については引き続き同社が運営しています。このため、本路線のJR西日本区間は、大糸線のJR同社区間と共に、他のJR同社在来線と接続せず、新幹線・JR他社在来線のみに接続する路線となっています。新幹線の開業後、津幡~富山間の在来線には特急列車が設定されておらず、名古屋・岐阜~富山間を直接結ぶ列車は本路線の「ひだ」のみとなっています。

また、北陸新幹線延伸開業後は、東京~高山間の所要時間は「東京~(東海道新幹線)~名古屋~(ひだ)~高山」の経路と「東京~(北陸新幹線)~富山~(ひだ)~高山」の経路でほぼ同等となりました。なお、富山駅は乗継割引の指定駅ではないため、北陸新幹線と「ひだ」を乗り継いでも特急料金などの割引は適用されません。そのため、名古屋経由の方が距離が長いにもかかわらず料金的には割安となります。一方、神奈川県内からは依然として名古屋経由の方が所要時間・運賃料金ともに有利となっています。

山間部が多いため、台風や大雨の影響を受けやすく土砂崩れや橋脚が流されるなどして長期間の運休が多発しています。


路線の歴史(岐阜~猪谷)

1920年11月1日岐阜~各務ケ原間開業。その区間内に長森駅、那加駅が開業。
1921年11月12日各務ケ原~美濃太田間開業。その区間内に鵜沼駅、坂祝駅が開業。
1922年11月25日美濃太田~下麻生間開業。その区間内に古井駅、中川辺駅が開業。
1924年3月20日下麻生~上麻生間開業。
1926年3月15日上麻生~白川口間開業。
1928年3月21日白川口~飛騨金山間開業。その区間内に下油井駅が開業。
1929年4月14日飛騨金山~焼石間開業。
1930年11月2日焼石~下呂間開業。
1930年11月27日飛越線猪谷駅が開業。
1931年5月9日下呂~飛騨萩原間開業。その区間内に禅昌寺駅が開業。
1932年8月20日飛越線猪谷~杉原間開業。
1933年8月25日飛騨萩原~飛騨小坂間開業。その区間内に上呂駅が開業。
1933年11月12日飛越線杉原~坂上間開業。その区間内に打保駅が開業。
1934年10月25日飛騨小坂~坂上間が開業し、全通(飛越線が高山線に編入し、路線名が高山本線となる)。その区間内に渚駅、久々野駅、飛騨一ノ宮駅、高山駅、上枝駅、飛騨国府駅、飛騨古川駅、飛騨細江駅、角川駅が開業。
1937年10月21日焼石~下呂間に少ヶ野仮信号場を設置。
1942年6月1日蘇原駅を新設。
1945年1月10日高山線列車脱線事故が発生し、43名が死亡した。
1952年8月5日少ヶ野仮信号場を少ヶ野信号場に変更。
1952年12月25日杉崎仮停車場を設置。
1953年4月1日少ヶ野信号場が駅に昇格し、少ヶ野駅(貨物駅)となる。
1955年10月1日飛騨宮田駅を新設。
1955年10月15日杉崎仮停車場が駅に昇格し、杉崎駅となる。
1956年3月26日岐阜~下呂間でディーゼル列車が初めて運行された。
1958年3月1日全線にディーゼル列車(準急「ひだ」)が運行される。
1958年7月24日台風11号とその後の大雨により、飛騨金山~渚間が不通となる(同年8月12日まで)。
1965年8月5日名鉄から乗り入れる準急「たかやま」の運転を開始(1966年に急行に昇格)。
1967年3月19日白川口~下油井間に鷲原信号場を設置。
1968年8月18日集中豪雨により、上麻生~白川口間が不通となる(同年9月12日まで、付近では飛騨川バス転落事故が発生)。
1968年9月25日上麻生~白川口間に飛水峡信号場を設置。
1968年9月28日飛騨金山~焼石間に福来信号場を設置。
1968年10月1日岐阜~高山間に列車集中制御装置(CTC)を導入し、特急「ひだ」の運行を開始。
1969年10月1日高山~猪谷(~富山)間に列車集中制御装置(CTC)を導入し、無煙化(高山駅にてSLの引退セレモニーが開催される)。
1973年4月20日少ヶ野駅が信号場に降格し、少ヶ野信号場となる。
1980年5月27日高山駅構内で電化起工式が行われるが、国鉄の財政悪化等により、工事が中止となった。
1987年4月1日国鉄分割民営化。東海旅客鉄道(JR東海)が岐阜~猪谷間を継承し、西日本旅客鉄道(JR西日本)が猪谷~富山間を継承。日本貨物鉄道(JR貨物)が岐阜~高山間と猪谷~富山間の第二種鉄道事業者となる。高山~猪谷間の貨物営業を廃止。
1990年3月10日岐阜~美濃太田間でワンマン運転を開始し、太多線との直通運転を開始(運行区間は岐阜~多治見)。急行「のりくら」が廃止。
1993年1月30日運行管理を美濃太田CTC指令から、東海総合指令所に移管(岐阜~猪谷間として)。
1994年10月25日高山本線60周年記念式典が行われ、キハ82系による「メモリアルひだ号」と飛越線60周年記念の客車列車が運行された。12月中旬には高山~飛騨古川間にてSLが1日2往復運行された。
1996年6月25日特急「ひだ」15号が下呂駅南約3km地点の三原トンネル出口にて大雨により落下した約50~60トンの巨石に衝突する事故が発生し、5両編成中先頭の2両が脱線、16人が負傷した。焼石~下呂間でバス代行輸送が行われた(同年6月27日17時まで)。
1999年12月4日美濃太田~高山間でワンマン運転を開始。急行「たかやま」(大阪発着のもの)が廃止となり、大阪駅発着の特急「ひだ」が運行を開始した。
2001年10月1日名鉄から乗り入れる特急「北アルプス」が廃止。
2003年10月1日高山~猪谷間でワンマン運転を開始。
2004年10月22日台風23号に伴う大雨により、飛騨市内を流れる宮川に架かる線路や鉄橋が流失し、高山~猪谷間が不通となる。
2004年11月18日高山~飛騨古川間の運行を再開。
2005年10月1日飛騨古川~角川間の運行を再開。
2007年3月18日岐阜~坂祝間の貨物列車の運行を終了。
2007年4月1日岐阜~高山間の日本貨物鉄道(JR貨物)の第二種鉄道事業を廃止。
2007年9月8日角川~猪谷間の運行を再開し、全区間の運行を再開。
2010年3月13日岐阜~美濃太田間の各駅でTOICAを導入。
2014年12月1日岐阜~猪谷間でキハ25形の運行を開始。
2017年5月キハ85系普通車4両編成で名古屋~飛騨古川間に臨時急行「ぬくもり飛騨路号」を計6日運行。飛水峡・中山七里の景勝地において徐行運転を実施し、下呂駅では列車に合わせて物産品を販売、飛騨古川駅においてはキハ85系の定期列車では行わない2番線入線を行った。
2018年6月29日局地的な集中豪雨によって飛騨萩原~禅昌寺間で土砂崩れが発生し、飛騨萩原~飛騨小坂間が不通となる(特急「ひだ」は下呂~高山間で運休となり、同年7月2日から代行バスの運行を開始)。
2018年7月5日平成30年7月豪雨の影響で、不通区間が飛騨萩原~猪谷(~富山)間となる。
2018年7月6日不通区間が飛騨金山~猪谷(~富山)間となる。
2018年7月7日不通区間が飛騨金山~猪谷間となり、焼石~下呂間と坂上~打保間で土砂流入等の発生が確認された。
2018年7月8日不通区間が美濃太田~猪谷間となる(代行バスも運休)。
2018年7月10日不通区間が白川口~猪谷間となる。
2018年7月11日不通区間が飛騨金山~猪谷間となる(特急「ひだ」の全列車運休を発表)。
2018年7月12日不通区間が飛騨金山~下呂間と飛騨古川~猪谷間になる(代行バスが運行区間を変更して再開)。
2018年7月14日不通区間が飛騨金山~下呂間と坂上~猪谷間になる。
2018年8月11日不通区間が坂上~猪谷間となる(特急「ひだ」の名古屋~飛騨古川間の運行を再開)。
2018年11月21日坂上~猪谷間の運行を再開し、全区間の運行を再開(特急「ひだ」の全区間の運行を再開)。
2020年7月6日令和2年7月豪雨の影響で土砂の流入等が発生し、美濃太田~猪谷間が不通となった。
2020年7月9日美濃太田~下麻生間の運行を再開。
2020年7月11日下麻生~下呂間、高山~猪谷間の運行を再開(特急「ひだ」の全列車運休を発表)。
2020年7月14日下呂~飛騨萩原間の運行を再開(特急「ひだ」が下呂~高山間運休となる)。
2020年7月18日飛騨萩原~飛騨小坂間、渚~高山間の運行を再開。
2020年7月23日飛騨小坂~渚間の運行を再開し、全区間の運行を再開(特急「ひだ」の全区間の運行を再開)。

沿線の概況(岐阜~猪谷)

岐阜駅を出て、鵜沼駅までは名鉄各務原線と、美濃太田駅までは国道21号線、木曽川と並行していきます。岐阜県岐阜市にある岐阜駅を出て、東海道本線が右側に離れたところで高架橋を下り、濃尾平野の中を通ります。東海北陸自動車道をくぐり抜ける手前で各務原市に入り、鵜沼駅を出たところで濃尾平野に別れを告げます。その後は坂祝町を通り、美濃加茂市に入って、旧・国鉄越美南線である長良川鉄道が左側から合流した後、美濃太田駅に至ります。

美濃太田駅を出て、久々野駅までは飛騨川(木曽川の支流で、飛騨地方では益田川とも呼ばれている)と、飛騨細江駅までは国道41号線と並行していきます。美濃太田駅を出て、太多線が右側に分かれた後、古井駅を出たところで川辺町に入ります。下麻生駅を出てしばらくしたところで七宗町に入り、飛水峡のすぐ近くを通ります。しばらく進むと白川町に入り、下油井駅を出た後に、下呂市に入ります。焼石駅付近では中山七里のすぐ近くを通り、有名な温泉地となっている下呂市の中心部にある下呂駅に至ります。下呂駅を出て、飛騨地方の行政の中心である萩原地区にある飛騨萩原駅を通り、飛騨小坂駅を出てしばらくしたことろで高山市に入ります。久々野~飛騨一ノ宮間の宮峠(宮トンネル)で分水嶺を越え、並行する川が飛騨川から神通川(宮川)に変わります。飛騨一ノ宮駅を出てしばらくしたところから高山盆地の中を通り、高山市の中心部にある高山駅に至ります。

高山駅を出て、上枝~飛騨国府間は谷を通り、その後は古川国府盆地の中を通ります。飛騨国府駅を出てしばらくしたところで飛騨市に入り、飛騨細江駅で古川国府盆地に別れを告げるとともに国道41号線と一旦分かれ、越中西街道(国道360号線・国道471号線)と並行して進みます。その後は再び谷を通り、唐堀トンネルをくぐるところで富山県富山市に入ります。しばらくして、国道41号線が合流したところで猪谷駅に着きます。


駅の紹介(岐阜~猪谷)

駅名\種別 普通特急
岐阜(CG00)
長森(CG01) |
那加(CG02) |
蘇原(CG03) |
各務ケ原(CG04) |
鵜沼(CG05)
坂祝(CG06) |
美濃太田(CG07)
古井 |
中川辺 |
下麻生 |
上麻生 |
白川口
下油井 |
飛騨金山
焼石 |
下呂(CG16)
禅昌寺 |
飛騨萩原
上呂 |
飛騨宮田 |
飛騨小坂
|
久々野
飛騨一ノ宮 |
高山(CG25)
上枝 |
飛騨国府 |
飛騨古川(CG28)
杉崎 |
飛騨細江 |
角川 |
坂上 |
打保 |
杉原 |
猪谷

※記号の凡例 ○:停車、△:一部停車、▽:一部通過、|:通過、
-:設定なし


車両(岐阜~猪谷)

特急・急行列車用車両

HC85系

普通・快速列車用車両

キハ25形

キハ75形(岐阜~下呂)