新幹線N700S系電車
運用事業者 |
東海旅客鉄道(JR東海) 西日本旅客鉄道(JR西日本) |
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製造所 |
日本車両製造 日立製作所笠戸事業所 |
製造年 |
先行試作車:2018年(平成30年) 量産車:2020年(令和2年)~ |
製造数 | 240両 |
運用開始 | 2020年(令和2年)7月1日 |
運用路線 | 東海道新幹線、山陽新幹線 |
最高速度 | 300km/h(東海道新幹線区間は285km/h) |
備考 | 鉄道友の会第61回(2021年)ローレル賞受賞 |
クイックアクセスガイド
N700S系は、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)に在籍する新幹線電車です。
東海道・山陽新幹線の第七世代の営業用車両として、2016年6月24日に確認試験車(量産先行車)の制作が発表されました。
JR東海とJR西日本の共同開発だったN700系と異なり、300系以来となるJR東海単独での開発車両となっています。従来の16両編成だけではなく、基本設計をそのまま用いて12両や8両など、海外輸出を意識した様々な編成を構成させることを可能とする「標準車両」を目指して制作されています。N700Sの「S」は、英語で「最高の」などを意味する"Supreme(スプリーム)"の頭文字から採ったものとなっています。
JR東海所属車の編成記号は『J』編成で、これはかつて300系で使用されていたものとなっています。JR西日本所属車も基本的な仕様は同一であり、3000番代(『H』編成)に区分されています。
車両外観
車体は、N700系と同じくアルミニウム合金製の中空押出型材によるダブルスキン構造を採用しています。車体断面はN700Aに比べて肩部のRを小さくしてより四角に近い形状とすることで、空力特性の向上と客室空間の拡大を図っています。アルミ合金の一部にはJR東海と日本車両製造、日立製作所、ハリタ金属(富山県高岡市)、三協立山が共同で実証した「アルミ水平リサイクル」の仕組みを導入し、廃車解体された700系から回収したアルミ合金を再利用しています。
先頭形状は、N700系・N700Aの「エアロ・ダブルウィング形」を進化させ、左右両サイドにエッジを立てた「デュアル・スプリーム・ウィング形」(Dual Supreme Wing:ふたつの最高の翼)としました。これにより、トンネル突入時の騒音と走行抵抗を低減させています。また、エッジを立たせたことで最後部車両となった場合に先頭部で発生していた走行風の乱れが抑制され、これによって走行風の乱れによる動揺が発生しやすい最後部車両の乗り心地の改善が図られたほか、標識灯の開口部をN700A比で80%拡大しています。
乗り心地の向上を図るため、両先頭車とパンタグラフ搭載車、グリーン車には従来のセミアクティブ制振制御装置に代わって、新たにフルアクティブ制振制御装置が搭載されました。従来他社の新幹線車両などで採用されていた、電気式アクチュエータによる電気機械式のフルアクティブ制振制御装置とは異なり、N700Sではセミアクティブ制振制御装置に小型モータと油圧ポンプを追加して推力を出す新しいタイプのフルアクティブ制振制御装置を採用しています。これにより、小型モータと油圧ポンプが故障した場合でもそのままセミアクティブ制振制御装置として使用出来るため冗長性が向上しており、更にモータの小型化によって消費電力も削減されています。
標識灯は、ヘッドライトがN700系のHIDから、新幹線では初採用となるLEDに変更され、その周囲を覆うようにLEDのテールライトが配置されています。
塗装は16両編成の場合N700系と同じく、車体全体を白で塗装し、側面に青帯を配するものとなっていますが、N700S系では、先頭車の両側にも帯が付加されています。 側面にはN700S系オリジナルのロゴマーク(N700 Supremeと表記)が貼り付けられています。
走行機器
主電動機は、新幹線としては初めて極数が6極のものを採用して固定子のコイルを薄くし、コイルを薄くした分回転子の径を拡大しました。回転子の径を拡大したことでその分回転子の長さが短縮可能となり、これによって主電動機の全長をN700A比で70mm短縮し、主電動機全体で70kgの軽量化を実現しています。また、主電動機の全長短縮によって生じた余裕と従来よりも幅の薄い歯車の開発により、駆動装置の歯車をN700Aまでのはすば歯車からやまば歯車に変更し、軸受周りの構造の見直しや保守の負担軽減、騒音の減少を図っています。
台車は、台車枠のフレーム構造が見直され、従来の補強部材が溶接された左右対称の2つの鋼材が溶接された構造から、底板の上に折り曲げられた鋼材を被せた構造に変更し、場所によって底板の厚さを変更することで強度を確保するシンプルなフレームとなっています。これにより溶接工数を削減し、台車枠の品質向上を図っています。また、補強部材は削減されていますが、剛性はN700Aの台車より高くなっています。
集電装置は支持碍子の数をN700Aの3本から2本に削減し、更に基部の内部構造を見直すことで幅を狭めており、これによって碍子カバーの幅も14cm狭めています。すり板はN700Aの一体型から10枚に分割されたたわみ式すり板に変更され、架線への追従性を向上させて離線やそれに伴うスパークの発生抑制を図っています。
本系列では、高速鉄道初の試みとなる「バッテリー自走システム」を採用し、車体下部に大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載しました。不測の事態により架線からの給電が行われなくなっても、最寄り駅やトンネル等を避けた場所など、乗客の避難が容易な場所まで最低限の自力走行が出来る仕組みを導入すると共に、トイレが使用できなくなる事態も回避できるようにしました。
車内仕様・サービス設備
車内仕様は16両編成の場合、8~10号車がグリーン車、他は普通車で構成されています。
座席配置はN700系と共通のものとなっていましたが、2020年10月に省令のバリアフリー基準が改正されたことを受け、2021年度以降に導入する編成では車椅子スペースが6席に増やされ、編成定員が300系以来標準の1,323名から1,319名に変更となりました。また、座席構造がN700系では、コイルばねとSばねの両方の特徴を併せ持った金属製のねじればねを採用し、これに樹脂製ばねを加えた複合ばねの上にウレタンを敷くものとなっていたのが、本系列では金属製のねじればねがソファーなどで用いられる布バネに変更し、高機能化を実現しながらN700系よりも軽量な座席となりました。
コンセントはN700系ではグリーン車の全座席と普通車の窓側(A・E席)・最前部・最後部の座席に設置されていたのが、本系列ではグリーン車の全座席と普通車の全座席に拡大されました。
喫煙ルームを3・7・10・15号車のデッキ部分に計6か所設けています。
N700S系は以下の8形式から構成されています。各形式とも番台区分により機器・車内構成が異なっています。
735形
グリーン席を備える中間電動車です。車掌室を備え、主変換装置を搭載しています。
736形
グリーン席を備える中間電動車です。便所・洗面所・荷物コーナーを備え、主変換装置を搭載しています。
737形
グリーン席を備える中間電動車です。喫煙ルームを備え、主変換装置を搭載しています。
743形
普通席を備える制御不随車です。博多向き運転台・便所・洗面所を備えています。
744形
普通席を備える制御不随車です。東京向き運転台を備えています。
745形
普通席を備える中間電動車です。主変換装置を搭載しています。また、一部の車両には、集電装置や公衆電話・便所・洗面所・荷物コーナーを搭載しているものがあります。
746形
普通席を備える中間電動車です。主変換装置と主変圧器を搭載しています。また、一部の車両には、便所・洗面所・喫煙ルーム・多目的室・車椅子対応設備・荷物コーナーを搭載しているものがあります。
747形
普通席を備える中間電動車です。主変換装置を搭載しています。また、一部の車両には、便所・洗面所・喫煙ルーム・荷物コーナーを搭載しているものがあります。
N700S系の編成は16両の1種類が存在しています。
16両
743 | 747 | 746 | 745 |
普通車 | 普通車 | 普通車 | 普通車 |
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745 | 746 | 747 | 735 |
普通車 | 普通車 | 普通車 | グリーン車 |
736 | 737 | 746 | 745 |
グリーン車 | グリーン車 | 普通車 | 普通車 |
745 | 746 | 747 | 744 |
普通車 | 普通車 | 普通車 | 普通車 |
現在、準備中。