名鉄3500系電車(2代)
運用事業者 | 名古屋鉄道(名鉄) |
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製造所 | 日本車両製造 |
製造年 | 1993年(平成5年)~1996年(平成8年) |
製造数 | 136両 |
運用開始 | 1993年(平成5年)6月 |
運用路線 | 蒲郡線・三河線・豊田線・築港線・瀬戸線・広見線(新可児~御嵩)・小牧線を除く全線 |
最高速度 | 120km/h |
備考 |
クイックアクセスガイド
名鉄3500系電車(めいてつ3500けいでんしゃ)は、名古屋鉄道(名鉄)が1993年から運用している電車です。1993年6月から1996年6月まで製造された、片側3扉で全車両の座席がロングシートの4両固定編成となっています。
従来投入されてきた6000系列の後継発展車種として、VVVFインバータ制御、電気指令式ブレーキ等の新機軸を導入のうえ登場した通勤形電車です。車体は普通鋼製(当時すでにJR各社を始め他社局では、通勤形車両の車体素材としてステンレス鋼製やアルミニウム合金製が主流となっており、名鉄が1990年代一杯までVVVFインバータ制御の通勤車を普通鋼製車体で新製投入し続けたことは希少な事例である)で、座席はオールロングシートとなっています。
就役後の変化として、登場時は種別・行先表示器が6000系以来の種別=漢字1文字(「快急」を除く)、行先表示=日本語のみの方式でしたが、2005年までに種別を2文字表記とし種別・行先ともに英文字を併記した方式へ変更されました。また、EB装置や折りたたみ式の転落防止幌なども順次取り付けられています。
総数136両は名鉄では6000系に次ぐ2位ですが、それを僅か4年間で投入しており、新造ペースに関しては現有車両の中で1位となっています。また6000系も瀬戸線在籍車を除くと120両に留まるため、瀬戸線の6000系が全廃された2014年度以降は、完全に3500系が名鉄最多車両となりました。
車体構造
車体は6500系の6518編成以降をベースとしていますが、先頭車前面には電気指令式ブレーキを意味する「ECB」 (Electric Command Brake) のプレート(デザイン文字を「VVVF」とする案もあったが、当時既に近鉄1250系などの登場から10年近く経過し他社ではVVVFインバータ制御が普及していて新味に乏しかったことと、名鉄ではむしろブレーキ方式の相違を明確に示す必要があるとの判断からこの表示に決定した)が取り付けられ、また正面下部にはスカート(排障器)を設置しました。また、正面上部には車両番号が表記されています。正面の車両番号表示は、名鉄における完全新製車では1954年以来、車体更新車でも1966年以来行われていませんでした。
車体の塗装デザインは落成当時、赤い車体に乗降口扉の上半分が灰色に塗られていたものとなっていましたが、2000年以後、他の部分と同じ赤色に塗り直され、スカーレット1色となっています。
主電動機・制御装置・台車
主電動機は東洋電機製造製のかご型三相誘導電動機(170kW)となっていますが、その後の増備車では三菱電機製も加わっています。かご型三相誘導電動機は回転子の構造が単純なため、短時間の過負荷による温度上昇に強くなっています。定格出力は170kWですが、短時間ならば実効出力で250kW以上を発揮でき、許容回転数も高くなっています。また、制御方式はGTOサイリスタ素子(4500V/4000A)を用いたVVVFインバータ制御となっています。これにより、通勤車ながらも高速性能は大幅に向上し、就役当初から名古屋本線の優等列車で120km/h運転を実施しました。ただ、高速性能を最重視していることもあり、逆に加速度は2.0 km/h/sと日本の在来線VVVF車両としては最低ランクに位置しています(現在の設定における比較。設計上は2.8km/h/sまで可能であるほか、その後登場した小牧線および上飯田線直通用の300系と瀬戸線用の4000系は同一の出力・歯車比で加速度3.0km/h/sの性能を確保している)。なお、特急車2000系、2200系においても、搭載モーターや基本的な走行性能は本系列をベースとしています。
台車は、ボルスタレス台車となっており、1995年からヨーダンパが設置されました。さらに、2004年からは電動台車のみ許容荷重を高めたタイプに交換されました。
ブレーキ制御は、MBS-A形電気指令式となっています。そのため、旧来のHSC-D形電磁直通式を有する6000系・6500系などとの連結運転は不可能となっています。電気指令式の採用によって、名鉄の車両としては初めて一つの主幹制御器で加速・減速操作を行うワンハンドル式が採用されました(名鉄車両の電気指令式自体は1991年に落成されたキハ8500系・廃車の時点で採用済み)。
車内仕様・サービス設備
車内はすべてロングシートとしました。
座席配置は6500系8次車・6800系6次車と同一で、座面形状が変更されました。ラッシュ対策のため、特に利用客が固まる乗降扉の両脇1人分ずつには座席を設けず立席スペースとし(名鉄は第一次オイルショック後の1974年にも、一部の2扉AL車・HL車の扉付近からクロスシートを撤去し立席スペースを増やす策を取っている)、扉間が6人掛け、中間車の車端部が4人掛けとしました(公称座席定員はそれぞれさらに1人分ずつ多いが、その場合1人当りの幅は最低基準の400mmとなる)。しかし実質座席定員が少ないとの指摘を受け、1996年製造の4次車からは1両につき8か所に1人用の補助席を追加しました(施錠機構が無い簡易な構造。そのため混雑時の使用を牽制する表示が添えられている。なお2014年度から順次撤去されている)。これは初期製造車の一部にも設置されています(後述)。また、運転席背後には当初から座席を設けず車椅子スペースとしています。
車端部には名鉄では特急車以外で初採用となる号車番号表示器とLED式車内案内表示装置を設置しました。号車番号表示は途中駅から行き先が分かれる列車に便利な機能で、案内表示器には次駅の案内などのほかその時々の速度を数字と電車をかたどったグラフで示す機能もあります。
室内の配色については、天井が6500系8次車などと異なるクリーム色で側壁は6750系2次車(廃車)から採用されている格子模様の化粧板としました。また、座席の表地の色はパープル(ストライプ)とブラウンの2種類となっていましたが、更新に伴い現在のモケット(300系タイプ)への変更が進められ、パープル(ストライプ)は消滅しました。2019年から300系タイプのモケットへの更新が進められています。
3500系は以下の4形式から構成されています。
ク3500形
上り方(豊橋方)の制御車(Tc1)です。
モ3550形
中間電動車(M2)です。電動車ユニットの豊橋側の車両となっています。
ク3600形
下り方(岐阜方)の制御車(Tc2)です。
モ3650形
中間電動車(M1)です。電動車ユニットの岐阜側の車両となっています。
3500系の編成は4両の1種類が存在しています。
4両
ク3500 | モ3550 | モ3650 | ク3600 |
1994年製造(3500系2次車)
4両編成7本が増備されました。基本仕様は1次車と同様のものとなっていますが、この増備車より列車無線アンテナの形状が変わり(1次車は6000系などと同じ従来型の列車無線アンテナ)、以後の新造車両ではこのタイプのものが採用されています。
3509Fの岐阜方先頭車のク3609は1995年9月より試験的に折り畳み式補助椅子を設置し翌年の増備車で本格採用されたほか、1997年には3509Fの他の3両と3508Fにも設置されました。
1995年製造(3500系3次車)
4両編成10本が増備されました。前述の通り、この増備車からは制御器や主電動機の製造会社が従来の東洋電機製造製に加えて東芝製と三菱電機製を採用した車両も登場しました。1995年以降からの東洋電機製造のVVVFインバータ装置などの電装品の会社名を示すTDKロゴの表記の仕方が、刻印式からプレート式のものに変更となりました。
この増備で、広見線新可児~御嵩間や尾西線新一宮(現在の名鉄一宮駅)~森上間などの支線にも入線するようになりました。ちなみに1995年の名鉄での新製車両は本系列のみでクロスシート車の新製が皆無となっていました。この3次車導入により、6000系16両が瀬戸線に転属、3780系の一部が代替廃車されました。
1996年2月製造(3500系4次車)
4両編成6本が増備されました。ク3609でテストされていた折り畳み式補助椅子が本格採用され、各車両に8名分ずつ設置されました。またドアチャイムが設置され、以後の新造車で標準装備となったほか、6000系などの一部の車両にも改造で取り付けられました。さらには冷房装置を低騒音型のものにし、冷房装置などサービス機器に電力を供給するSIVをGTOサイリスタ方式からIGBT方式のものに変更しました。
室内では天井中央部の高さが僅か1cmであるが高くなりました。なお、全編成とも制御装置、主電動機ともに東洋電機製となっています。
1996年4月製造(3500系5次車)
4両編成8本が増備されました。基本仕様は4次車と同様のものとなっています。
上記4次車とこの5次車の増備により、6000系の5~8次車の中間車のみ12両を瀬戸線に転用させることで、HL車全廃・モ800形(初代)営業運転終了・7300系の一部廃車といった動きがあり、名鉄の1500V線区での冷房化率は100%となりました(ただし、各務原線の田神~新岐阜(現在の名鉄岐阜駅)間に当時乗り入れていた美濃町線電車を除く)。さらに、6000系列については豊橋までの定期運用が消滅しました(その後、一時的に定期運用が復活した)。
この増備をもって本系列の製造は終了し、1997年からの新製は3700系となりました。また、7000系から連綿と引き継がれてきた卵形小断面車体の製造も特急車を除いて最後となりました。
現在、準備中。