近鉄80000系電車

車両について

運用事業者 近畿日本鉄道(近鉄)
製造所 近畿車両
製造年 2019年(令和元年)~
製造数 66両
運用開始 2020年(令和2年)3月14日
運用路線 難波線・奈良線・大阪線・名古屋線
最高速度 130km/h
備考 2020年度グッドデザイン賞(ベスト100)受賞
鉄道友の会第64回(2021年)ブルーリボン賞受賞

近鉄80000系電車

クイックアクセスガイド

車両の概要

車両の性能・仕様

形式

編成

車両についての見解


車両の概要

近鉄80000系電車(きんてつ80000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道(近鉄)が2020年から運用している特急形電車です。6両編成7本と8両編成2本が在籍し、「ひのとり」の愛称を持っています。

東海道新幹線開通後、利用客が低迷した近鉄名阪甲特急は1980年代からの旧国鉄の相次ぐ運賃値上げによって、徐々にシェアを取り戻し、21000系(21020系)アーバンライナーは、名阪甲特急の最大のライバルであるJR東海道新幹線との運賃格差と、難波など大阪のミナミ地区へのアクセスの良さから一定の旅客確保維持に成功しました。 しかし21000系の登場以来30年が経過し、その間に東海道新幹線は、1992年に300系(廃車)による速達列車である「のぞみ」の運用開始をはじめ、1999年の700系・2007年のN700系による乗り心地や車内サービスの向上、さらなる到達速度の短縮化によって近鉄に対するアドバンテージを高めていました。ただし東海道新幹線、さらにはその先に登場するリニア中央新幹線に対し、近鉄は速度面でこれ以上の大幅な向上は望めないものとなっていました。そのため「名阪間2時間」という速度面のサービス向上は当初から考慮せず、その代わりに2015年から、自社の乗客2,700名の他、他路線の利用者1,200名に対しても利用者アンケートを実施しました。その結果「座席を倒すときに後部座席の乗客を気にする」という意見が多かったことから、座席の後部を覆うバックシェルを全席に採用し、また年々増加する外国人客に対するサービス向上策として、大型荷物スペースや、多言語での案内、さらにはWi-Fiの設置を決めていました。

また近鉄の他路線と比較し、名阪間の利用者は多岐に及び、観光・旅行が3割、イベント・コンサートが2割、出張・ビジネス2割、その他3割と、広範な顧客ニーズがあり、長距離であるため収益性も高くなっています。さらには名古屋からユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行く若年層に名阪特急の利用者が多いことから、名古屋地区で「快適で安い」事をアピールして名阪特急の知名度向上を図っていました。 また2020年の東京オリンピックを控え、訪日外国人客に近鉄沿線の観光地をアピールする狙いもありました。そのような背景で開発した電車が本系列となっています。

車両愛称の「ひのとり」には「ゆったりとした空間や気品のある車両」のイメージを込めています。

近鉄時刻表および駅掲示の時刻表では、当該系列使用列車に独自のロゴタイプが表示されます。JTB時刻表では「ひのとり」のひらがな表記で案内されています。また、近鉄時刻表では車椅子マークも併記されています。

乗車には、特急料金のほかに、ひのとり特別車両料金が必要となりますが、プレミアム車両はしまかぜ(50000系)と、レギュラー車両はデラックスカー(2+1列配置・シートピッチ1050mm)と比較して安価に抑えられています。


車両の性能・仕様

車体構造

先頭形状は名阪特急にふさわしい風格とスピード感を醸し出す流線形で、前面の大きな一枚窓や、上下2段×20個が直線的に配置されたLED前照灯が特徴的なものとなっています。

車体はメタリックレッドの3層塗装にクリア塗装を重ねた5層塗装で、プレミアムゴールドの帯とロゴマークを配しています。窓は紫外線・赤外線カットガラスを採用した大型とし、窓回りはアーバンライナーのオリジナル車を思わせるデザインの半透明ブラック塗装、妻面はピアノブラック仕上げとしています。

乗降扉は22000系以降プラグ式となっていましたが、本系列では引き戸式となりました。

乗降扉付近に設置された行先表示器にはフルカラーLEDを採用しました。時速60km/hで消灯しLEDの寿命延長を図っています。この色の内、基本を白とし、赤を種別表示、黄を列車表示とし、駅ナンバリングカラーにも対応しました。また号車表示は行先表示器と一体で表示されています。

主電動機・制御装置・台車・運転機器

主電動機はかご形三相交流誘導電動機を用いています。また、制御方式は炭化ケイ素(SiC)をハイブリッド適用したIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御となっています。

台車は、ディスクブレーキとヨーダンパを併用したボルスタレス台車となっています。

ブレーキ制御は、回生ブレーキ付き電気指令式となっています。

車内仕様・サービス設備

「くつろぎのアップグレード」をコンセプトとし、シートを最大までリクライニングさせた範囲まで覆う「バックシェル」を全席に採用することで、リクライニングに起因するストレスを解消しています。また、大型テーブルや荷物フック、カップホルダーの設置や全席コンセント完備とするなど、主に座席周りの快適性を向上させています。片道新幹線、片道近鉄特急の利用や、約2時間という所要時間、新大阪駅・名古屋駅で寝過ごす心配がないことから、仮眠を目的とした利用も多く、名阪特急へ優先投入される特急車の設計にあたっては、(当時の)新幹線普通車よりも座席間隔を広くとるようにしてきましたが、本系列においてはいっそう深度化させています。

行先や停車駅、運行情報などを多言語で提供する液晶ディスプレイを設置しているほか、ガラス製の荷棚や仕切扉を採用し、開放感あるデザインとしています。全車空気清浄機を備え、無料Wi-Fiサービスが提供されています。客室・デッキ・大型荷物置き場には防犯カメラを設置しています。

先頭車両はプレミアム車両で、ハイデッカー構造となっています。また、横揺れを低減する電動式フルアクティブサスペンションが設置されています。本革を使用した電動リクライニングシートが2+1列で並び、シートピッチは鉄道車両としては国内最大級の1300mmで、グランクラスや国内線旅客機のファーストクラス同等となっています。高さ・角度調整機能付きの大型ヘッドレストや、電動レッグレスト・シートヒーター・読書灯を備えているるほか、窓カーテンも電動式となっています。内装はベージュとダークウッドを基調とし、レッドとブラックのチェッカー柄のカーペット敷きとなっています。天井のLED間接照明はフルカラー調色が可能となっており、名阪特急運用時の終着駅到着前には青色で点灯します。デッキは大理石調のデザインで、挽きたてのレギュラーコーヒーや紅茶、お菓子などの購入が可能なカフェスポットや、大型荷物を収納できるロッカーが設けられています。

中間車両はレギュラー車両で、高さ調整機能付きのフットレストを備えたリクライニングシートが2+2列で配置されています。シートピッチはJR新幹線や特急車両のグリーン車と同等の1160mmで、グレー・ナチュラルウッド・グレーウッドを基調とした内装となっています。サ80300に車椅子対応席を設けています。座席は全席禁煙としていますが、モ80400に喫煙室を設けています。モ80400には自動販売機を、モ80200、モ80400、モ80500にはロッカーを、モ80200、モ80500、モ80700には多目的に利用できるベンチスペースを、サ80300、モ80700、サ80800には荷物置きスペースを備えています。

トイレは、ク80100、サ80300、ク80600、サ80800の各形式に設けられました。このうちサ80300形は車椅子対応で着替えが可能なチェンジングボード・ベビーベッド・オストメイト対応設備を備えた大型多目的洋式(共用)と男性小便器個室の組み合わせとなっています。ク80100形・ク80600・サ80800形は女性専用と共用の洋式をそれぞれ1か所と男性小便器個室を設けました。女性客に対する配慮は洗面所についても工夫され、通路から鏡に映る姿が見えない配置としています。


形式

80000系は以下の8形式から構成されています。

ク80200形

上り方(大阪難波・大阪上本町方)の制御車(Tc1)です。連結面寄り車端部に乗降扉がなく、名古屋寄り車端部にカフェスポットとトイレが設置されています。

モ80200形

電動車(M1)です。名古屋寄り車端部にベンチスペースが設置されています。

サ80300形

付随車(T)です。名古屋寄り車端部に車椅子対応兼多目的型(ベビーベッド設置)のトイレ、洗面室、男性用トイレが設置されています。また、車椅子利用者に配慮するために、デッキと客室を連絡する扉が異なっており、両開き式となっています。さらに、デッキ寄りの座席は左右1脚タイプとなっています。

モ80400形

電動車(M2)です。名古屋寄り車端部に喫煙室と自動販売機を設置しています。

モ80500形

電動車(M3)です。名古屋寄り車端部にベンチスペースが設置されています。

ク80600形

下り方(近鉄奈良・近鉄名古屋方)の制御車(Tc2)です。連結面寄り車端部に乗降扉がなく、大阪寄り車端部にカフェスポットとトイレが設置されています。

モ80700形

上り方(大阪難波・大阪上本町方)の増結用の電動車(M4)です。名古屋寄り車端部にベンチスペースと簡易運転台が設置されています。

サ80800形

下り方(近鉄奈良・橿原神宮前・近鉄名古屋方)の増結用の付随車(T2)です。大阪寄り車端部に簡易運転台を設置し、名古屋寄り車端部に通常のトイレ、洗面室、男性用トイレと女性専用トイレが設置されています。


編成

80000系の編成は8両と6両の2種類が存在しています。

8両

ク80100モ80200サ80300モ80700
プレミアムレギュラーレギュラーレギュラー
サ80800モ80400モ80500ク80600
レギュラーレギュラーレギュラープレミアム

6両

ク80100モ80200サ80300モ80400
プレミアムレギュラーレギュラーレギュラー
モ80500ク80600
レギュラープレミアム


車両についての見解

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