近鉄23000系電車

車両について

運用事業者 近畿日本鉄道(近鉄)
製造所 近畿車両
製造年 1993年(平成5年)~1995年(平成7年)
製造数 36両
運用開始 1994年(平成6年)3月15日
運用路線 難波線・奈良線・京都線・橿原線(大和西大寺~大和八木)・大阪線・名古屋線・山田線・鳥羽線・志摩線
最高速度 130km/h
備考 1994年度ブルネル賞奨励賞受賞

近鉄23000系電車

クイックアクセスガイド

車両の概要

車両の性能・仕様

形式

編成

車両についての見解


車両の概要

近鉄23000系電車(きんてつ23000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道(近鉄)が1994年から運用している特急形電車です。

近鉄が三重県志摩郡磯部町(現在の志摩市磯部町)に開発した複合リゾート施設である志摩スペイン村が1994年4月22日に開業するのに合わせて製造された特急形車両で、1993年から1995年にかけて6両編成6本(36両)が近畿車輛で製造されました。

運行区間は、近鉄名古屋、大阪難波(一部大阪上本町)、京都の各ターミナルから賢島ないし鳥羽までとなっています。また、京都~近鉄奈良間、大阪難波~近鉄奈良間の運用にも入っています。

1994年にブルネル賞奨励賞を受賞しています。

本系列で運用される特急の場合、時刻表では交通新聞社が発行する『JR時刻表』・近鉄が発行する『近鉄時刻表』および近鉄各特急停車駅の時刻案内板では太陽をイメージしたシンボルマークが使われ、JTBパブリッシングが発行する『JTB時刻表』では「IL」の表記がなされています。また『近鉄時刻表』では車椅子マークも併用されています。


車両の性能・仕様

車体構造

先頭形状は、21000系のイメージを受け継いだラウンドスタイルとクサビ形を組合わせた流線形としました。フロントガラスは運転席後方のパノラマデッキの乗客の眺望性を考慮して上辺を拡大し、大型曲面ガラスの2枚構成としました。前照灯は角型シールドビームを4個配置し、標識灯・尾灯はLED式のものが車体下部スカート内に縦2列横6列の計12個を1ユニットとして左右に設置されました。フロントの傾斜角は42度としました。また、中央に非常用の連結器が格納され、通常はクサビ状の構体から連結器が突出しないようにしました(連結器を常時格納する方式は10100系以来である。10100系では後年、常時露出する構造に変更された)。なお、列車無線アンテナは、30000系などと同じく運転台付近の屋根に設置され、他の流線形特急車とは先頭部分の印象が異なっています。

車体断面と構造は22000系「ACE」とおおむね同様のものとなっています。違いとしては、屋根巻上げ部半径が22000系では300mmなのに対し、23000系では500mmとして、やや丸味を帯びています。この断面形状はレギュラーカー・デラックスカー・サロンカーを問わず全車同一としています。

乗降扉は22000系と同様の案内レール式のプラグドアを採用し、有効開口幅を900mmとしました(全車同一)。

側面窓は連続ガラスの外はめ式であり、上下幅を22000系と同じ825mmとしました。モ23200形は縦1,225mm×横1,700mmの単独の大窓が6個並んでいます。窓高さが大きいためにガラスを直線形状とすると構体との段差が生じることから、曲面ガラスを使用しています。なお、モ23300形の車内販売コーナー(シーサイドカフェ)部分の海側(近鉄大阪線を基準として見た場合、参宮急行電鉄以来の呼称として、上本町に向かって右側を山側、左側を海側と呼ぶ)にはサロンカーと同一サイズの大窓が設けられ(山側には業務用プラグドアを配置し窓はない)、モ23200形とセットで本系列の外観上のアクセントとなっています。

塗装は伊勢志摩の明るいイメージを取り入れた表現として、上半分が豊かな太陽光線のイメージでサンシャインイエロー、下半分が21000系や26000系でも採用されたクリスタルホワイト、裾は砂浜をイメージしたグレイッシュサンドが塗られ、境目は海をイメージしたアクアブルーの細い帯が引かれていました{現在は上半分が、伊勢志摩の太陽と陽射しを表現するため、6編成のうち、3編成(末尾番号が奇数の編成)がサンシャインレッド塗装(赤色:太陽のイメージ)、残りの3編成がサンシャインイエロー塗装(黄色:陽射しのイメージ)となっている。また、裾との境目は赤色編成がアクアブルー、黄色編成がコスメオレンジとなっている}。モ23400形のトイレ寄りの車体側面にはISLのイニシャルを縦のストライプであしらったロゴタイプが白色で描かれていました(現在は新しいものとなっている)。行先方向幕は側面の乗降扉脇にのみ設置されています。

特別車両であるデラックスカー、サロンカーの客用扉付近には専用マークがプリントされています。デラックスカーは21000系と同一のDSマークですが、サロンカーは「SALOON SEATS」の頭文字をデフォルメしたSSマークが新たに採用されました。

主電動機・制御装置・台車・運転機器

主電動機はかご形三相交流誘導電動機を用いています。また、制御方式はGTOサイリスタ素子を用いたVVVFインバータ制御となっています。

台車は、ディスクブレーキとヨーダンパを併用したボルスタレス台車となっています。

ブレーキ制御は、回生ブレーキ付き電気指令式となっています。

車内仕様・サービス設備

車内デザインは本系列独特のサロンカーを除いておおむね22000系を踏襲しました。デラックスカーとレギュラーカーには座席の自動回転機構が取り入れられており、折り返し駅における座席転換作業の省力化が図られています。妻壁にはドアの上と横にLED式の情報表示装置を設けました(現在はドア横のものは撤去)。この内、号車番号表示器(2種類の内、化粧室知らせ灯を併設するタイプ)には座席転換用キースイッチ機能が存在していました。客室扉の窓は従来車と同様の縦長形状であるが上下を丸くデザインしました。荷棚には先端にスリットが設けられ乗客が荷物を見つけやすくした他、スポット空調の吹き出し口を2つ設けました。荷棚照明は22000系とはデザインが異なり、縦長としました。客室天井も22000系に準じていますが、両サイドの飾り板は各車両で色が異なっています。車内放送用スピーカーはこの飾り板内にビルトインされています。

サロンカーはグループ向けのセミコンパートメントとなっており、向かい合わせ式の座席とテーブルが通路を挟んで2人用(ツインシート)と4人用(サロンシート)がそれぞれ6区画設けられています。座席が背中合わせになった部分には荷物を置くスペースがあるほか、客室外の端部にも荷物置き場を別に設置しました(現在はこの部分が消火器置き場となっている)。営業開始当初は制度の都合上喫煙車として設定されていたため(1994年当時は1号車と6号車、8号車が禁煙車として設定されており、2両目に連結されるサロンカーは喫煙車の扱いだった)、タバコの煙が隣の区画に移らないようにエアカーテンを設置しました(現在は撤去)。これは脚台の送り出し送風器から背ずり上部の吹き出し口に空気を流出させることで「空気の壁」を作りだす構造となっていました。窓は開放感を演出するために上下に大きく寸法を拡大し、ヘッドクリアランスを高めに確保したことから、遮光設備はプリーツカーテンに替えて電動上昇下降式のロールカーテンとしました。当座席のシートピッチは2,250mmで、席幅はサロンシートが1,280mm、ツインシートが750mmとなっています。モケットは、ベージュ地に虹色の柄が入った「レインボーモザイク」と名付けられた表布が採用されました(現在はピンク系のブロックパターンのものとなっている)。雰囲気の狙いとして「ヨーロッパ客車調のサロン」としました。運行開始当初はオーディオサービスが行なわれ、スチュワーデスによるイヤホンの配布によって、ひじ掛けのイヤホンジャックに差し込んで音楽が楽しめました。

デラックスカーは21000系で利用が多かったことから採用されたもので、通路を挟んで2人掛けと1人掛けリクライニングシートが並んでいます(計39席)。しかし、サロンカーが設けられた関係で21000系とは異なり1両のみの設定となりました(21000系も車体更新後は1両のみの設定となる)。営業運転開始当初から禁煙車に設定されているため、座席に灰皿は設置されていません。座席の仕様は21000系と異なり、幅広のヘッドレストを採用し、座布団は金属ばねに替えてウレタンを使用し軽量化を図りました。モケットは深紅色の「クリムソンレッド」と呼ばれる色の表地を採用し、枕カバーも赤色系として情熱のスペインを表現しました(現在はベージュ地に白の格子模様の入ったものとなっている)。足置き台は21000系と共通の形状で、靴を脱いで使用することができます。テーブルはひじ掛け内に収納されていますが、座席回転時にテーブルを出した状態でも壁と接触せずに回転できるように異形としました。ただし、これではテーブル面積が不足するため、2人掛け席の中肘掛にも小テーブルを設けました。妻部壁面には、見付の向上と汚損を目立たなくさせるために海をイメージしたストライプパターンの模様が描かれています。照明はレギュラーカーと共通ですが、荷棚下にカーテンライトを設けた点が異なっています。カーテンは一般的な横引式(プリーツカーテン)となっており、床にはタイルカーペットが全面に渡って敷かれています。シートピッチは1,050mmで、サロンカーと同じく、かつては貸出イヤホンによるオーディオサービスと週刊誌の無料貸出サービスが行なわれていました。

レギュラーカーの座席は22000系と同じ形状のリクライニングシートで足のせも同形状となっています。シートモケットの色は、志摩スペイン村のテーマパーク「パルケエスパーニャ」の4つのエリアのテーマカラーを採用し、各色はランダムに配置しました(現在は「伊勢志摩の海のさざなみ」を表現した青系で4色のブロックパターンのものとなっている)。このモケットには「スパニッシュストライプ」と名付けられた横縞模様も入っていました。なお、レギュラーカー各車両にはテーマカラーが設定されており、そのテーマカラーが座席の7割を占めるようになっていました。また、客室天井両サイドの飾り板も各車のテーマカラーを採用しました(現在は同一のものとなっている)。モ23500形にはバリアフリー設備として車椅子スペースを2台分設置しており、このスペースと直後の4人分の座席番号は90番台になっており、これらの座席は別枠発売となっています(一般客の購入は不可能)。車椅子区画と一般区画の通路の幅が異なるため、通路幅の段差吸収のために簡易仕切りを設けました(現在は撤去)。側窓下のFRPカバー内には21000系と同様にFMアンテナ線が通され、手持ちのラジオで音楽を聴けるようになっていましたが、その後オーディオサービスは中止されました。カーテンはプリーツカーテンが採用されました。シートピッチはデラックスカーと同様、1,050mmとなっています。

トイレはモ23500形で車椅子対応仕様になっており、ベビーベッドも設置されています。本系列では全て洋式と男性小便器ブースのセットに統一され、汚物処理方式は近鉄特急初の真空式を採用しています。床面は天然石を用いています。モ23200形の洗面室には21000系モ21500形と同じ造りのマガジンラックが設けられました。

モ23300形には「シーサイドカフェ」と称する壁面にディスプレイを持つ対面式カウンターがあり、リゾート特急の特色を前面に出した構成としました(現在はディスプレイは撤去)。壁にはデラックスカーと共通のイメージを持つストライプパターンの模様が描かれています。貫通扉付近の壁には志摩スペイン村グッズ展示ショーケースが設けられました。車内販売を行なう上で必要なシンクや給湯器は背面の作業室内に設置し、冷凍冷蔵庫、電子レンジはカウンター付近の壁にビルトインされました(現在は電子レンジはカウンター内のテーブルに移設)。そのほかに、乗降扉付近に観葉植物のための植木鉢(照明機能あり)を設置し、天井には直径844mmの大型円形照明を、また、カウンターテーブル下にイルミネーションランプ24灯を設置し、カウンター横の壁にも照明機能を持たせて「Sea Side Cafe」の切り文字を光によって演出しました(現在は撤去)。 営業運転開始当初は車内販売が実施されていましたが、利用客の減少に伴い2002年3月に一旦廃止されました(代替として飲料の自動販売機を設置。またその後、車内販売は土日祝日の一部列車で再開)。

運転室後部は「パノラマデッキ」となっており、出入口だけでなくハンドバー(腰掛けとしても使用できる)を設けて展望スペースとしての機能を持たせました。本系列にも遮光幕は設置されていますが、あまり使われていません。


形式

23000系は以下の6形式から構成されています。

ク23100形

上り方(大阪難波・大阪上本町・近鉄名古屋方)の制御車(Tc1)です。

モ23200形

電動車(M1)です。トイレが設置されています。

モ23300形

電動車(M'1)です。車内販売準備室とシーサイドカフェが設置されています。

モ23400形

電動車(M'2)です。トイレと喫煙コーナーが設置されています。

モ23500形

電動車(M2)です。車椅子対応のトイレと自動販売機が設置されています。

ク23600形

下り方(近鉄奈良・賢島・鳥羽方)の制御車(Tc2)です。


編成

23000系の編成は6両の1種類が存在しています。

6両

ク23100モ23200モ23300モ23400
デラックスサロンレギュラーレギュラー
モ23500ク23600
レギュラーレギュラー


車両についての見解

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