近鉄21020系電車

車両について

運用事業者 近畿日本鉄道(近鉄)
製造所 近畿車両
製造年 2002年(平成14年)
製造数 12両
運用開始 2002年(平成14年)12月23日
運用路線 難波線・奈良線・大阪線・名古屋線・山田線・鳥羽線・志摩線
最高速度 130km/h
備考 鉄道友の会第46回(2003年)ブルーリボン賞受賞
2003年度グッドデザイン賞(商品デザイン部門)受賞

近鉄21020系電車

クイックアクセスガイド

車両の概要

車両の性能・仕様

形式

編成

車両についての見解


車両の概要

近鉄21020系電車(きんてつ21020けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道(近鉄)が2002年から運用している特急形電車です。6両編成2本が在籍し、「アーバンライナーnext」の愛称を持っています。

21000系「アーバンライナー」が登場して15年近くが経過し、バリアフリー対策および受動喫煙対策など、社会観点からの要請や変化に対応するために更新工事が必要になりました。そして21000系の工場入場時の代替として、2002年10月に2編成が近畿車輛で製造されました。2002年12月23日に暫定営業開始、2003年3月6日のダイヤ変更から名阪特急で運用を開始しました。

社会情勢の変化に対応するために、客室は全席禁煙となり、喫煙者専用のスペースが新たに編成中3か所に設けられました(2007年9月以降は2か所)。この他、名阪特急に占める女性客の比率が約4割と多いことを勘案して、トイレを男女別に振り分けました。座席は、でん部の苦痛を和らげるために新機軸の構造を採用しているほか、車椅子対応トイレの形状を円弧形にするなど、後の新幹線やJR在来線特急、私鉄特急に引き継がれた設備が多くなっています(新幹線N700系などに円弧形トイレが採用され、チルト機構の座席も名鉄2000系など各社の車両に採用された)。

当該系列のコンセプトはそのまま21000系更新の際にも適用され、さらに2009年竣功の22600系に対しては一層進化させて引き継がれました。

車両愛称「アーバンライナーnext」の「next」には「次世代に向けてのアーバンライナーの進化型」という意味が付与されています。

近鉄時刻表および駅掲示の時刻表では21000系と同様、当該系列使用列車にはULのロゴタイプが表示されます。JTB時刻表では「UL」のローマ字表記で案内されています。時刻表では21000系との区別はされず、一体で扱われています。また、近鉄時刻表では車椅子マークも併記されています。

車内の通路上には製造当時としては珍しい、液晶式車内案内ディスプレイが設置されました。


車両の性能・仕様

車体構造

先頭形状は21000系からのイメージの継続性を出すために、ラウンドスタイルとクサビ形を組合わせた流線型となっていますが、クサビ先端部を21000系より下げてアーバンライナーの進化型であることを印象付けると共に軽快感を出しました。正面窓の上下はブラックアウト処理として、両面にはくぼみをつけてウェイブを強調し、直線的だった21000系と比べると印象として柔らかくなりました。これは近鉄が近畿車輛に「関西らしいおだやかさと愛きょうのある顔つき」にデザインするように要請したため、くぼみのあるファニーフェイス(とぼけた顔つき)となったものであり、また女性の柔らかさ、やさしさを取り入れたという理由もあります。窓内にはHID前照灯が4灯埋め込まれています。LED式の尾灯と標識灯は黒く塗られた部分の下部に埋め込まれています。フロント窓は21000系ではピラーが入って4分割されていましたが当系列では1枚ガラスとなってピラーは廃止されました。ピラー廃止を受けてワイパーブレードの停止位置を車体外板側に変更し運転士の視界を遮らないよう配慮しました。

近鉄電車はJRに比べて車体幅が狭く(JRの特急車両は概ね2,900mm~2,950mmだが近鉄は2,800mm)、側窓も上下に大型化したため(21000系比で+135mm)構体に鋼材を使用しましたが車体強度の不足が避けられず、窓を支える柱を太くしたり有限要素法によるコンピュータでのシミュレーションを行なって強度を確保しました。車内でカーテンに挟まるようにして窓柱が出っ張っているのはそのためとなっています。

乗降扉はプラグ式となっており、扉が開いた際にはステップが出るようになっています。ステップはその後の新造車には採用されず、当該系列特有の構造となりました。乗降扉の有効開口幅は全車890mmに統一しました。そして、近鉄特急車では初めて製造当初から連結面側に板状の転落防止幌を装備しました。

乗降扉付近に設置された行先表示器には近鉄特急初のLEDを採用しました。表示色は赤、緑、アンバーの3色で時速60km/hで消灯しLEDの寿命延長を図っています。この3色の内、基本をアンバー(黄色)、赤を「NON STOP」表示としました。また号車表示は行先表示器と一体で表示され、「号車」と黄色く描かれた仕切りが設けています。

塗装は前面が黒の他はクリスタルホワイトを基調に裾部がジェントルベージュ、その上にコスメオレンジの帯が通っています。また先頭部のスカートの色もジェントルベージュを塗装していますが、その後ろにある排障器は黒色として目立たなくさせました。

主電動機・制御装置・台車・運転機器

主電動機はかご形三相交流誘導電動機を用いています。また、制御方式はIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御となっています。

台車は、ディスクブレーキとヨーダンパを併用したボルスタレス台車となっています。

ブレーキ制御は、回生ブレーキ付き電気指令式となっています。

車内仕様・サービス設備

両クラスの基調色は明るめのものとし、レギュラーカーは窓下をストライプ柄が入ったオレンジ、デラックスカーは模様入りのピンク調としました。荷物棚は物を置く部分の高さを1,730mmに下げて背の低い人でも使いやすくしました。

座席番号の表示は荷棚下に大きめにプリントして目立たせています。この表記スタイルはのちに在来車両にも波及しました。

窓まわりは窓框内帯構成が見直され、斜めにカットされたことで直接物を置くことができなくなりました。そのため、窓際に小物を置けるプチトレイが設けられ、のちにトレイには落下防止のステンレス製の枠が取り付けられています。カーテンは、他事業者において採用例が増えているロールアップ式ではなく、横引き式のプリーツカーテンとなっています。先述の内容通り、窓柱は強度確保のため内側に出っ張っており、カーテンはこの張り出し部の両脇におさまるようデザインされています。

インフォメーション設備として、仕切扉上部に22インチの液晶モニターを設置し、号車番号、駅名、ニュース、天気予報や走行中の前面展望(夜間を除く)の放映などを行っています。ただし、文字が小さく視認性に劣ることから、後にROMを50000系電車と同様の文字が大きめのタイプものに更新されました。

電源コンセントは設置されず、近鉄では2009年製の22600系において初採用されています。

座席構造はデラックスシートでは通路を挟んで海側が1人掛、山側が1人掛2席の新開発のゆりかご型リクライニングシートを、レギュラーシートでは横2+2配列の新開発のゆりかご型リクライニングシートを採用しました。デラックスシートはゆりかご型リクライニングシートで、背もたれを倒すと角度に応じて腰部が沈んで座席が傾くような状態となります。座布団は従来車のように前方へスライドしない構造となっています。シートピッチは21000系と同一の1,050mmで、それぞれが独立性の高い1人掛けシート(通路を挟んで1席と2席)となっていますが、2席側の座席は回転時は2席が同時に動くようになっています。モケットの色は赤系で、リクライニングは電動となっており、肘掛けのスイッチで操作するようになっています。リクライニング角度は22度で、座面は9度まで傾きます。また、読書灯が設けられ、背もたれ左側からLEDの光が出るようになっています(40Wハロゲン灯)。テーブルは肘掛け内蔵型(インアーム式)で、2つ折りタイプとなっています。座面高さは21000系からさらに下げられて、380mmとなりました。足乗せは折りたたみ式となっています。レギュラーシートは、ゆりかご型リクライニングシートで、リクライニング操作は手動となっています(肘掛けにあるボタンを押しながら倒す)。リクライニング角度は17度で、座面は7度まで傾きます。2席の中央部に肘掛けが2つ設置されており、座席形状は、リクライニング時に後ろの人が心理的な圧迫感を覚えないように背もたれ上部の両角を落としているため、柔らかな造形となりました。また、座席の専有面積を広げるために肘掛の厚みを薄くしました。モケットの色はグレー系で、テーブルタイプはデラックスシートと同じとなっていますがが、こちらはブーメラン状の片側一か所のみとなっています。足乗せは、使用時に足で下げる構造となっています。モ21220形には車椅子対応の座席が設けられています。シートピッチは21000系と同一の1,050mmで、座面高さは21000系からさらに下げられて、380mmとなりました。

トイレは、モ21220、モ21320、モ21520の各形式に設けられました。このうちモ21220形は車椅子対応の大型多目的洋式(共用)と男性小便器個室の組み合わせとなっています。モ21320形・モ21520形は女性専用と共用の洋式をそれぞれ1か所と男性小便器個室を設けました。女性用にはベビーチェアも設けられています。男女別トイレの入り口は僅かにカーブしていますが、これは女性客がトイレに入る所をデッキ側から直接視認できないようにするための配慮となっています。女性客に対する配慮は洗面所についても工夫され、洗面所の鏡の裏に照明を設けることで、そこから漏れ出る光によって、鏡に映した時に明るい表情に見えるようにしています。車椅子対応の大型トイレは、日本の鉄道車両では初となる曲面を描いた壁面にして、ドアをボタン開閉式としています。このほかベビーベッドやベビーチェアも設置しています。

照明は間接照明を採用しました。

客室内は全面禁煙となったため、喫煙コーナーをク21120形・サ21420形・ク21620形の客室外に設けています。この部分はパーティションが用意され、横に細長い2枚の窓が設置されています。空気清浄機や脱臭装置も設けることで、非喫煙者に配慮しています。床面はタバコの灰等によって焦げ面が出ないよう人工大理石を使用しました。このエリアの空調装置は客室とは別個としています。また、コーナー付近に利用者が立った場合に直近の扉が不意に開くことを防止するために、走行中はタッチスイッチ方式による自動開閉機能を採用し、停車中は光電スイッチ方式に変化します。なお、デラックスカー(ク21620形)の喫煙コーナーは2007年9月4日に廃止され、車内販売準備室に転用することになり、冷蔵庫などが設置されました。


形式

21020系は以下の6形式から構成されています。

ク21120形

上り方(大阪難波・大阪上本町方)の制御車(Tc1)です。連結面寄り車端部に喫煙コーナーが設置されています。

モ21220形

電動車(M1)です。大阪寄り車端部に車椅子対応兼多目的型(ベビーベッド設置)のトイレ、洗面室、男性用トイレが設置されています。また、車椅子利用者に配慮するために、デッキと客室を連絡する扉が異なっており、両開き式となっています。さらに、デッキ寄りの座席は左右1脚タイプとなっています。

モ21320形

電動車(M2)です。通常のトイレ、洗面室、男性用トイレと女性専用トイレが設置されています。

サ21420形

付随車(T)です。大阪寄り車端部に喫煙コーナーを設置し、名古屋寄り車端部に自動販売機を設置しています。

モ21520形

電動車(M3)です。洗面室、男性用トイレと女性専用トイレが設置されています。

ク21620形

下り方(近鉄奈良・近鉄名古屋方)の制御車(Tc2)です。車内販売準備室が設置されています。


編成

21020系の編成は6両の1種類が存在しています。

6両

ク21120モ21220モ21320サ21420
レギュラーレギュラーレギュラーレギュラー
モ21520ク21620
レギュラーデラックス


車両についての見解

現在、準備中。