近鉄21000系電車
運用事業者 | 近畿日本鉄道(近鉄) |
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製造所 | 近畿車両 |
製造年 | 1988年(昭和63年)~1990年(平成2年) |
製造数 | 72両 |
運用開始 | 1988年(昭和63年)3月18日 |
運用路線 | 難波線・奈良線・大阪線・名古屋線・山田線・鳥羽線・志摩線 |
最高速度 | 130km/h |
備考 |
1988年度グッドデザイン商品(現在のグッドデザイン賞)選定 1988年度日経優秀製品・サービス賞受賞 鉄道友の会第32回(1989年)ブルーリボン賞受賞 |
クイックアクセスガイド
近鉄21000系電車(きんてつ21000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道(近鉄)が1988年から運用している特急形電車です。
当初は「アーバンライナー (URBAN LINER) 」の車両愛称を与えられていましたが、後年実施された更新改造後は「アーバンライナーplus (Urban Liner plus) 」と呼ばれています。改良増備型の21020系電車「アーバンライナーnext」とともに近鉄の看板車両となっています。
近鉄難波(現在の大阪難波駅)~近鉄名古屋間の名阪ノンストップ特急の専用車として、1988年(昭和63年)1月に、6両3編成(18両)が近畿車輛で製造されました。同年3月18日より、1日6往復体制で営業運転を開始しました。その後も増備され、1990年に名阪ノンストップ特急の全列車が本系列に置き換えられました。のちに乗客増により中間車を増備のうえ8両編成も登場しました。基本的に名阪特急で運用されますが、大阪難波~近鉄奈良間や近鉄名古屋から伊勢志摩方面の一部の特急にも充当されています。
当該系列は名阪ノンストップ特急のシェア拡大のために、鉄道車両の常識には捉われない革新的なデザインと乗客本位の居住空間を備え、従来の近鉄特急とは大きく異なる姿で登場しました。しかしその一方で、電気的システムや足回りをはじめ、座席、トイレの構造は基本的に在来車両のスタイルを踏襲しており、車両全体のフルモデルチェンジが実施された訳ではありませんでした(デザインの革新性を除けば、それ以外の面は従来の特急車と大差はない)。足回りや電気的な面も含めて全面的にモデルチェンジしたのは、本系列より4年あとに竣功した22000系「ACE」となっています。しかし、本系列で具現化された車両デザインやそのコンセプトは、以後の近鉄特急車両のみならず、他社の車両にも大きなデザインの変革をもたらす契機となりました。
1988年グッドデザイン商品、日経優秀製品・サービス賞、1989年(平成元年・第32回)鉄道友の会ブルーリボン賞の3賞を受賞しています。
本系列はレクレーションカー(1949年~1957年)以来の特別車両を連結した特急車両となっています。編成中1両連結され、利用には運賃・特急料金のほかに特別車両料金が必要です。特別車両を連結するため運用列車は決まっており、このために近鉄時刻表、および近鉄の駅掲示の時刻表には、当該系列で運転される列車に「UL」を図案化したロゴタイプを表記しています。JTB時刻表では「UL」のローマ字を表記しています。
車体構造
先頭形状はスピード感を表現するために、真円形のはりだしを車体下部に作り、そこから後退角43度で倒した形状としました。このスタイルの類型がそれまでの国内の車両には存在しなかったため、非常にオリジナリティの高いデザインとして評価された一方で、ドイツ連邦鉄道(現在のドイツ鉄道)の車両に似ているという指摘も幾多の鉄道趣味誌で記述されています。また、以前は飛び出していた標識灯・尾灯は車体内部に埋め込んで面一としたほか、前照灯も前面窓の内部に設置して目立たなくさせました。このためワイパーおよび連結器上部の張り出し以外に突起物はなく、シンプルな外観となりました。前面窓は4枚の曲面ガラスの構成とし、窓内に角型のシールドビームを2個設けています。尾灯・標識灯は、LED式で、その特性を活かして流線型の形状に合わせた曲面配列としました。LEDは黄色(標識灯)と赤色(尾灯)の素子を交互に配置してこれを1ユニットとし、縦4列横12列の48ユニットを左右に取り付けました(現在は縦2列、横5列の10ユニット)。2次車は前面窓下にウィンドウ・ウオッシャーノズルを取り付けました。
中間先頭車は営業列車として先頭に立つことを前提としないためシンプルな構造ですが、本線用としてLED式の標識灯、尾灯や排障器、列車無線アンテナを備えています。塗装はオレンジのラインが正面まで回り込むが、貫通扉はデッキの雰囲気に合わせてグレーとなっています。簡易運転台はモ21200形とモ21500形に装備され、前照灯1灯と運転窓が1つ、および手動式ワイパーが設けられました。2次車はモ21200形の簡易運転台が廃止されました。
構体は従来通り鋼製全溶接組み立てで、本系列から側構を内傾させ、屋根巻き上げ部半径600mmの卵型断面としています。車体断面(コンタ)を在来車両から大きく変更したことで、各検車区の洗浄機の改造を実施しました。車体幅は従来の近鉄電車と同じ2,800mmですが、車体高さは客室内の空間拡大に伴い、屋根高さを12600系比で+25mmの3,645mm(全高4,050mm)としました。また、防音・断熱の効果を上げるためこの寸法分の床厚を増したことから、レール面から床面までの高さは25mm高い1,145mmに設定しました。側面の出入台付近には行先表示器と一体枠で号車番号表示器を設置しました。
乗降扉は、バリアフリーの思想が一般化する以前の設計であったことから、当時の近鉄特急伝統の折戸式を踏襲しました。6両で7か所(モ21500形のみ2か所)設置されました。折戸の形状は、折戸部分が車体からへこんで見えないように、一段ふくらませて厚めとしましたが、2次車はフラット化されました(現在は1次車もフラット化)。折戸部分にフレッシュオレンジの帯は入っていませんでした(現在は入っている)。モ21500形とモ21600形の乗降扉付近には "DS のマーク(「DELUX SEATS」の頭文字をデフォルメしたもの)が表記されました。
側面窓は新設計の外付け式連続窓としました。これはペアガラスと一体になったアルミニウム合金製の枠を構体にビス絞めし、また窓枠同士が突き合わせとなる部分を交互にはめあうように接合しています。ビス部と接合部は黒ゴムで覆い隠し、窓枠の艶を消す役割も担っています(現在はなし)。ゴムで覆いきれないアルミ枠部分は艶消し黒を塗装しました。間柱部分は黒に塗装することでガラス表面から内部が見えないようにしました。連続窓の両端部はR100mmに丸めて車体デザインとの調和を図りましたた。この構造の連続窓は26000系「さくらライナー」にも踏襲されましたが、22000系以降は、より構造を簡略化して採用されました。窓の上下寸法は12600系比で+80mmの830mm、前後は連続窓としたために+130mmの1,830mmとして大型化しました。
塗装はこれまでの近鉄特急車のオレンジとブルーとは全く異なり、ライトでピュアなイメージを表現するために、クリスタルホワイトをベースとして、フレッシュオレンジの帯を通しました(現在はコスメオレンジ)。連続窓の周りにもオレンジの帯を縁取りし、窓のない部分には複数の細帯(ピンストライプ)を通して、連続窓の美しさを引き立たせています(現在は撤去)。また、フロントの窓にもオレンジの縁取りが入っています。なお、貫通幌の外側の色も、編成美を考慮して白色に塗装されました。
主電動機・制御装置・台車・運転機器
主電動機は直流直巻補極巻線付整流子電動機を用いています。また、制御方式はWN駆動方式を用いた抵抗制御となっています。
台車は、シュリーレン式軸箱支持機構とダイレクトマウント式揺れ枕機構を併用した空気ばね台車となっています。
ブレーキ制御は、設計当時の近鉄で標準であった、HSC-D発電ブレーキ付き電磁直通式となっています。
車内仕様・サービス設備
オープンルームの平床構造で2クラス制の採用により両クラス専用の客室が用意されました。インテリアデザインはビジネス客の利用を前提とすることから、それまでの明るいサニートーンから一転してモノトーン系の内装として落ち着きを表現しました。その雰囲気を損なわないように化粧板は単色で艶を抑えた特注品が使用され、金属色は足元を除いて排除するかアルマイト処理されたものを用いりました。
両クラスの基調色は、デラックスカーは格調の高さと落着きを表現するためにローズベージュを基調としてアクセントカラーはゴールド、レギュラーカーは明るさと現代感覚を表現するためにグレーを基調としてアクセントカラーはシルバーとしました。デッキとの仕切り妻壁は、両クラスの基調色をベースに色のドット模様をちりばめ、遠くから層状に見える街の灯りを表現しています(アーバン・グラデーションと呼称)。デザインは山内陸平が担当しました。
窓まわりはアクセントカラーの金属で窓縁を作り、そこから腰羽目部へ曲面のFRPでつなぐことで一体感のある見付としました。荷棚はアルミ押出型材にて構成されたパネル構造となっており、その表面にはダイノックフィルム(住友3Mの製品で建築内装材)を貼り付け艶を抑えて客室デザインとの調和を図りました。仕切り戸の脇にはLED式の号車番号などを表示する装置を設けましたが、車内案内表示装置の設置は見送られました(現在は液晶モニターで表示する方式となっている)。また従来は窓柱にあった飾り造花は当系列より無くなりました。カーテンは両クラス用に模様と色を変えており座席モケット同様、細かい柄で立体的に縫い上げました。
ドアにはブロンズカラーの細長の窓と細い取手が設けられインテリアにアクセントを添えました(現在は細い取手が撤去され、細長の窓も無色透明となっている)。デラックスカーのドアはシート配列に呼応して中央から少しオフセットしておりドア上部の光電管スイッチのレンズ位置も偏っています。これに伴いモ21500形とモ21600形を繋ぐ貫通路も中央配列ではなく客室ドアと同じ方向にオフセットしています。
デラックスカーの通路には歩行音を抑えるためにカーペットが敷かれましたが、2次車は床全面に渡って敷かれ、1次車にもフィードバックされました。レギュラーカーの床面は塩化ビニール製の敷物で、カラーはグリーン系として通路部はベージュとしました。床面のコーナーは、清掃性と耐食性を考慮してRに巻き上げています。
近鉄特急の座席番号は、従来数字のみ(奇数が窓側、偶数が通路側)で示していましたがデラックスカーについてはJRなどと同様に「10A」といった英数字の組み合わせとなりました(10Aは大阪寄から10列目、A席は1人掛け、B席は2人掛けの通路側、C席は同じく窓側である)。
座席構造はデラックスシートでは通路を挟んで海側が1人掛、山側が2人掛の同心回転式簡易式リクライニングシートを、レギュラーシートでは従来車と同じ形状の偏心回転式簡易リクライニングシートを採用しました(現在は双方とも新開発のゆりかご型座席となっている)。デラックスシートは、ヘッドレストをプライバシーの確保のために大きな張りだしを付けて、高さも引き上げ、これに腰部の波状のふくらみとも相まった独特のシートデザインとなっています。また、ソファ感覚を出すために座面高さが引き下げられました。さらに、座席の基本構造は在来の近鉄特急車と同じで、リクライニングすると座面が前にスライド、また回転させる場合には背もたれを起こす方式ですが、リクライニングのレバーはひじ掛け上部に設けられて操作が容易になり、テーブルの面積を広げました。レギュラーシートは、プライバシー確保の面から背面の高さが若干引き上げられ、デラックスシートと同様に座面高さを引き下げ、腰部に波状のふくらみが設けられました。また、シートピッチはデラックスシートと同一の1,050mmと広く、各席に足置き台が設けられており、座席の横幅は全長が1,070mm(1人分に換算した場合、455mm)と、12600系と同一の寸法となっています。さらに、2次車は席中央に折りたたみ式の肘掛が設けられました。
トイレは、モ21200、モ21300、モ21500の各形式に設けられました。モ21200とモ21300は和式と男性小便器ブース、洗面所の組み合わせ、モ21500は洋式と洗面所の組み合わせとしました(現在は和式は存在していない)。便器は男性小便器が陶器製で、和式と洋式は金属製(着色)となっています。汚水処理は循環式となっています。床は赤御影石とし、壁には4色のタイルを貼り付けてグラデーション調としました。2次車は洋式トイレに自動で便座シートを交換する装置を設けました。洗面台は水と湯の出る2つの水栓を設置しました(従来の近鉄特急車では水のみ)。モ21500形は通路が偏心しているため洋式トイレは大型化され、男性用トイレを併設しない代わりに洗面台スペースを広げました。その背後にマガジンラック(内部におしぼり蒸し器)を設けました。
照明は、従来のアクリルカバー付きの直接照明を廃し、間接照明、または半間接照明を採用しました。天井は反射板(空調装置の点検蓋を兼用)にて蛍光灯の光を反射させる間接照明を採用しました。荷棚下は和紙調のグローブを光が透過する傍らで、その隙間を通して反射光が漏れ出る半間接照明となっています。また荷棚のカーテン部分に電球を組み込んでカーテンを照らし都合4色の光により空間に奥行きとリズムを与えています。2次車ではカーテンライトのON/OFFスイッチが設けられ、1次車にも反映されました。なお天井中央の蛍光灯カバーは冷風吹き出し口のスリットと一体構造のため、結露防止の観点からFRP製となっています。
車内販売準備室は、モ21200、モ21400形に設けています。モ21200形の準備室は4両運転時の予備的なものとなっています。メインで使われるモ21400形の準備室には荷物搬入用の扉が設けられていますが、スペースの都合から片側1か所しか設置されていません。2次車はモ21404形に形式変更のうえ運転室を廃止(簡易運転台化)して車内販売準備室の拡大に充てました。準備室の荷物搬入用扉は引戸に変更されています(両側に設置)。これにともない、モ21200形の車販準備室から厨房設備がなくなり、車販控室に改められました。
21000系は以下の8形式から構成されています。
モ21100形
上り方(大阪難波・大阪上本町方)の制御電動車(Mc1)です。連結面寄り車端部に喫煙コーナーが設置されています。
モ21200形
電動車(M')です。大阪寄り車端部に21020系に準じた車椅子対応兼多目的型(ベビーベッド設置)のトイレ、洗面室、男性用トイレが設置されています。また、車椅子利用者に配慮するために、乗降扉と、デッキと客室を連絡する扉が異なっており、乗降扉は幅広のプラグドア、デッキと客室を連絡する扉は両開き式となっています。さらに、デッキ寄りの座席は左右1脚タイプとなっています。
モ21304形
電動車(M)です。通常のトイレ、洗面室、男性用トイレと女性専用トイレが設置されています。
モ21404形
電動車(M')です。簡易運転台があり、大阪寄り車端部に喫煙コーナーを設置し、名古屋寄り車端部に自動販売機および公衆電話を設置しています。
モ21500形
電動車(M)です。簡易運転台があり、通常のトイレ、洗面室、男性用トイレが設置されています。
モ21600形
下り方(近鉄奈良・橿原神宮前・近鉄名古屋方)の制御電動車(M'c1)です。車内販売準備室が設置されています。
モ21700形
上り方(大阪難波・大阪上本町方)の増結用の制御電動車(Mc1)です。通常のトイレ、洗面室、男性用トイレが設置されています。
モ21800形
下り方(近鉄奈良・橿原神宮前・近鉄名古屋方)の増結用の制御電動車(M'c1)です。大阪寄り車端部に喫煙コーナーが設置されています。
21000系の編成は8両と6両の2種類が存在しています。
8両
モ21100 | モ21200 | モ21304 | モ21404 |
レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー |
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モ21700 | モ21800 | モ21500 | モ21600 |
レギュラー | レギュラー | レギュラー | デラックス |
6両
モ21100 | モ21200 | モ21304 | モ21404 |
レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー |
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モ21500 | モ21600 | ||
レギュラー | デラックス |
現在、準備中。