JR東海313系電車

車両について

運用事業者 東海旅客鉄道(JR東海)
製造所 日本車輛製造
近畿車両(3次車2600番台まで)
東急車輛製造(現在の総合車両製造所)(1・2次車のみ)
製造年 1999年(平成11年)~2014年(平成26年)・2019年(令和元年、代替新造)
製造数 539両+代替2両
運用開始 1999年(平成11年)5月6日
運用路線 JR東海の中央本線名古屋~中津川間と非電化区間を除くすべての路線と、その他の2路線(中央本線:辰野~茅野/篠ノ井線:塩尻~松本)
最高速度 120km/h(8000番台のみ130km/h)
備考 1999年度グッドデザイン賞受賞

JR東海313系電車

クイックアクセスガイド

車両の概要

車両の性能・仕様

形式

番台区分について

編成

導入年次による車両の動きについて

車両についての見解


車両の概要

313系電車(313けいでんしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)の直流近郊形電車です。

1999年当時、JR東海は日本国有鉄道(国鉄)時代に製造された車両から省エネルギータイプの自社形車両への置き換えを進めており、特急形車両では定期列車の車両置き換えを完了していました。一方、近郊形車両においても211系5000番台や311系、213系5000番台を投入してきましたが、両系列の投入完了後も103系・113系・115系・117系・119系・123系・165系といった国鉄形車両が半数以上を占めており、これらの国鉄形車両の置き換えを目的として登場した車両です。

車体断面は同社における最小の車両限界である身延線を基準に決定され、同社のすべての直流電化路線での走行を可能としました。性能面では従来の自社形車両と比べてもパワーアップが図られており、311系に代わって東海道本線における大多数の快速列車への集中投入といった都市部の近郊輸送に留まらず、後述するローカル区間でのワンマン運転や有料ライナー列車まで、あらゆる需要に対応しており、同社の標準車両と位置付けられました。そのため、車内仕様や機器構成により、当初から細かな番台区分が設定されています。

1998年度末に77両、1999年度に104両が投入され、いずれも1999年に営業運転を開始しました。これにより同社の103系が全車廃車となり、165系も普通列車の定期運用から離脱し、東海道本線名古屋地区で113系の定期運用が消滅し、さらに113系0番台が全車廃車となるなど国鉄形車両の淘汰を進め、同社における自社形電車の比率を55%にまで向上させました。2001年にも6両が増備されました。

2006年度には204両もの大量増備が行われ、総計391両を有する同社の最大両数系列在来線電車となるとともに、同社の国鉄形車両である113系2000番台、115系、123系を淘汰しました。さらに、2010年から2013年にかけて120両が増備され、117系と119系の淘汰を完了した後は同社の在来線国鉄形電車は211系0番台8両を残すのみとなり、ほぼすべてが自社形に更新され、2014年度には2015年3月1日の武豊線電化に伴い、28両が増備されました。これによって、313系は総計539両となり、同社の在来線電車の過半数を占める一大勢力となりました。

313系は15年以上にわたって製造が続いているため、導入年次による仕様変更も多くあります。そのため、本稿ではまず各次車についての共通事項を述べ、続いて番台区分による仕様の差異、導入年次による車両の動きを1・2次車、3次車、4次車、5次車に分けて記述します。


車両の性能・仕様

基本構造

313系は、同社の特急形車両である373系を基本とし、近郊形に応じた変更および改良がなされています。また、編成は番台区分に応じ2・3・4・6両編成が存在します。

車体構造

211系以降の近郊形としては一般的な、片側3扉を有する軽量オールステンレス製車体(運転台部は普通鋼製)であり、連結時に通行可能な貫通扉と貫通幌(幌受)を備えています。前面窓は側面に回り込むパノラミック・ウィンドウで、運転席側上部に行先表示器、助士席側上部に種別表示器、前照灯は前面窓下部と貫通扉上部に計4個、尾灯は前面窓下左右に前照灯と一体化されて2個設置されています。

1990年代以降に導入されたJR他社のステンレス車と異なり、側板のビード(浮き出し線)が残されています。雨樋部は張り上げ屋根構造となっています。扉間の客室窓は1枚固定式であり、窓柱は荷重を受けない構造として窓ガラスの内側に設け、車内仕様による窓割りの違いに対応しています。戸袋窓・妻窓は設けられてなく、連結面寄りの側窓は、非常時に上部が内側に折れて開けることのできる構造となっています。先頭部は白色に塗装され、前面から側面にかけJR東海のコーポレートカラーであるオレンジ色の帯を巻いています(8000番台・8500番台は異なる)。

用途や内装などの差により多様な番台区分があるが、車体の構造はいずれも同一となっています。また、ワンマン運転を考慮し、先頭車の運転台と隣接する側扉は、運転台側に210mm寄せられています。側扉は、近郊形として一般的な1300mm幅の両開きドアを片側3箇所に設けています。

なお、客室内の騒音低減のため、床下には廃ゴムタイヤ破砕再用品である吸音材が詰められており、他社の新型車両と比較しても高水準の静粛性を有しています。

主電動機・制御装置・台車

主電動機は373系で実績のあるものを使用し、MT比を1:1とすることで加速性能を向上させると同時に、10パーミル上り勾配での均衡速度は130km/hを確保しています。MT比は編成にかかわらず固定され、3両編成には主電動機数を半分にした車両が組み込まれています。また、制御装置は373系のGTO素子に代わり、東芝製IGBT素子によるVVVFインバータが採用されています。

台車は、211系の流れをくむ円錐積層ゴム式の軽量ボルスタレス台車であり、空気バネ位置に改良を加えられたほか、ヨーダンパを装備しています。付随台車は1軸2ディスクブレーキを採用するとともに、踏面清掃装置を備え、踏面ブレーキを省略しています。また、全軸に滑走検知装置を備えています。

運転台は373系に準拠しており、貫通式であるためコンパクトにまとめられています。左手ワンハンドル式マスコン、右側にはタッチパネル式液晶モニタ装置を配備し、ボタン式のEB装置、定速制御を装備しています。定速制御は一定速度以上で力行4段か5段でボタンを押すと作動します。力行は5段、ブレーキは抑速ブレーキと常用ブレーキ7段、非常ブレーキの計9段階です。

ブレーキ制御は電気指令式です。回生ブレーキを主、空気ブレーキを従として、編成全体のブレーキ力を確保する「T車遅れ込め機構」を有しており、空気ブレーキの作動を抑制することで褶動(しゅうどう)部のメンテナンス軽減を図っています。また、回生ブレーキは同一き電区間内に力行車両がないと失効しやすいことから、発電ブレーキ機構を一部の番台区分に搭載しています。さらに、回生ブレーキが失効した場合でも、その不足分のみを空気ブレーキと発電ブレーキで補うブレンディング制御を採用しており、回生効率の向上と回生失効時における衝動の抑制を図っています。これらのシステムは373系のものを継承しています。電動空気圧縮機(CP)は、実績の多いレシプロ(ピストン)式を採用しながらも、動力源を交流電動機に変更して騒音低減を図っています。

また、柔軟な運用にも配慮されており、在来車の211系、213系、311系と併結する際には、併結する系列に対して313系が性能(引張力)を合わせる設定とすることで、編成間の性能不均衡を防ぐ設計となっています。

車内仕様・サービス設備

座席は用途に応じ、転換クロスシート、固定クロスシート、ロングシートを適宜組み合わせて配置しています。このうち、転換クロスシートは、まくら折れ機構を採用し、快適性を損なわずにシートピッチを詰めることに成功しています。

側窓は固定式であり、車端部の側窓の上部のみが内側に折れて開く構造を採用し、非常時の換気に備えています。窓ガラスには紫外線(UV)カットの複層ガラスを採用しているが、日除けも省略しておらず、フリーストップ式ロールカーテンもしくは横引きカーテン(8000番台・8500番台)を備えています。

交通バリアフリー法への対応として、全車にドアチャイムを備え、全編成に車椅子対応洋式トイレのほか、各扉上にLEDによる車内案内表示装置を備えています(小文字2段表示が可能であるが、「締切中 NOT IN USE」の表示を除き専ら大文字1段表示で使用される)。また、乗降促進メロディと車外スピーカーを搭載しています。さらに、一部の番台区分では押ボタン式の半自動扉機構を備えています。

車内照明は、311系に引き続いて客室全長に亘るカバー付き蛍光灯です。ただ、カバーの断面形状が初期車と3次車以降で少し異なっており、前者が僅かに左右非対称の曲線形状、後者が左右対称の円弧形状となっています。5次車ではカバー付きのLEDへと変更になりました。


形式

313系は以下の4形式から構成されています。各形式とも番台区分により機器・車内構成が異なっています。

クモハ313形

上り方(熱海・塩尻・亀山・国府津方)の制御電動車(Mc)です。シングルアーム方式のパンタグラフや、一体型のVVVFインバータ制御装置と補助電源装置(SIV)を搭載しています。

モハ313形

中間電動車(M)です。VVVFインバータ制御装置を搭載するほか、一部の車両はSIVか空気圧縮機(CP)を搭載しています。

クハ312形

下り方(米原・甲府方)の制御車(Tc')です。CP、蓄電池(BAT)を搭載するほか、車内にトイレが設置されています。

サハ312形

中間付随車(T)で、一部の車両はCPやBATを搭載しています。


番台区分について

番台\設備 行先表示機車内仕様ワンマン
対応
発電
ブレーキ
編成両数配置
0番台
300番台
転換クロス
(車端部固定クロス)
××4両
2両
大垣
静岡
1000番台
1500番台
転換クロス
(車端部ロング)
××4両
3両
大垣
3000番台 セミクロス×2両大垣
静岡
8000番台
8500番台
転換クロス
(特別仕様)
××3両静岡
400番台
1100番台
1600番台
フルカラー
LED
転換クロス
(車端部ロング)
×
(一部)
4両
3両
大垣
400番台
1700番台
フルカラー
LED
転換クロス
(車端部ロング)
×3両大垣
2300番台
2500番台
フルカラー
LED
ロング××3両静岡
2300番台
2350番台
フルカラー
LED
ロング
(準備)
2両静岡
2300番台
2600番台
フルカラー
LED
ロング×3両静岡
3100番台 フルカラー
LED
セミクロス×2両静岡
5000番台 フルカラー
LED
転換クロス××6両大垣
1300番台 フルカラー
LED
転換クロス
(車端部ロング)
2両神領
静岡
5300番台 フルカラー
LED
転換クロス××2両大垣

編成

313系の編成は6両・4両・3両・2両の4種類が存在しています。

6両(5000番台)

クモハ313サハ313モハ313サハ313
モハ313クハ312

4両(0番台・400番台・1000番台・1100番台)

クモハ313サハ313モハ313クハ312

3両(0番台・400番台・1000番台・1500番台・1600番台・1700番台・2300番台・2500番台・2600番台・8000番台・8500番台)

クモハ313モハ313クハ312

2両(300番台・1300番台・2300番台・2350番台・3000番台・3100番台・5300番台)

クモハ313クハ312


導入年次による車両の動きについて

1・2次車

本節では、1998年度から2000年度にかけて製造された車両の動きについて述べます。東急車輛製造(現在の総合車両製造所)での製造は1・2次車のみとなります。

大垣電車区(現・大垣車両区)

・313系0番台・300番台92両配置⇒東海道本線の快速列車(豊橋~大垣)、普通列車(大垣~米原・美濃赤坂)を中心に運用。

・311系⇒東海道本線の普通列車(豊橋~岐阜)中心の運用へ。

・117系⇒東海道本線の普通列車(浜松~豊橋、大垣~米原)中心の運用へ。

・113系2000番台⇒一部が静岡運転所(現・静岡車両区)に転属され、残りは廃車。

神領電車区(現・神領車両区)

・313系1000番台・1500番台21両配置⇒中央本線の快速列車(名古屋~中津川)を中心に運用。

・313系8000番台・8500番台18両配置⇒中央本線のセントラルライナー(名古屋~中津川)を中心に運用。

・313系3000番台32両配置⇒中央本線・篠ノ井線(中津川~松本)と関西本線(名古屋~亀山)を中心に運用し、ワンマン運転を開始。

・213系5000番台、113系2000番台⇒中央本線(名古屋~中津川)の朝夕中心の運用へ。

・103系、165系⇒廃車。

静岡電車区(現・静岡車両区)

・313系3000番台24両配置⇒身延線・御殿場線を中心に運用。

・115系⇒東海道本線(熱海~豊橋)中心の運用へ。

・113系2000番台⇒大垣電車区(現・大垣車両区)から転属。

・113系0番台⇒廃車。

3次車

本節では、2006年度に製造された車両について述べます。新たな番台区分として、2000番台と5000番台が登場しました。それ以外の番台区分においては、初期車のものに100を加えることで、仕様の変更を示しています。近畿車輛での製造は3次車2600番台までとなっています。

大垣車両区

・313系5000番台72両配置⇒東海道本線の快速列車(豊橋~大垣)を中心に運用。

・313系0番台⇒東海道本線の普通列車(豊橋~岐阜)中心の運用へ。

・211系5000番台⇒静岡車両区に転属。

神領車両区

・313系1000番台(1100番台・1600番台・1700番台)29両配置⇒中央本線、飯田線等の快速・普通列車を中心に運用。

・113系2000番台⇒廃車。

静岡車両区

・313系2000番台(2300番台・2350番台・2500番台・2600番台)99両配置⇒東海道本線(熱海~豊橋)を中心に運用。

・313系3000番台(3100番台)4両配置⇒身延線・御殿場線を中心に運用。

・211系5000番台⇒大垣車両区から転属。

・113系2000番台、115系、123系⇒廃車。

4次車

老朽化した117系および119系の置き換え用に2010年度から2012年度の間に120両が製造されました。既存の1000番台と5000番台増備車のほか、新たな番台区分として1300番台と5300番台(いずれも2両編成)が登場しました。4次車以降は全車日本車輌製造で製造されています。4次車は全て大垣車両区や神領車両区の投入となっています。

5次車

2015年3月1日の武豊線電化開業に伴う増備車として2014年度に28両が製造され、神領車両区および大垣車両区に配属されました。いずれも武豊線専用ではなく、既配置の車両と共通運用されています。増備車の投入で捻出されたキハ25形0・100番台5編成10両、キハ75形200・300番台3編成6両と3200・3300番台3編成6両および400・500番台6編成12両は2015年3月10日付で美濃太田車両区に転出しました。


車両についての見解

現在、準備中。